2026年最新LCAと業界動向から考える、シェアモビリティ「脱炭素」の次の課題
製造・充電・回収・再配置まで、LCAで考える次世代モビリティ。

都市部では、電動キックボード、電動アシスト自転車、小型EVなどを活用したシェアモビリティが急速に普及しています。
ガソリンを直接燃焼せず、小型の電動車両で短距離移動を提供することは、都市交通の脱炭素化において大きな前進です。
しかし、電動化が進んだからこそ、次の問いが重要になってきました。
「走行中にCO₂をほとんど排出しない」ことと、
「サービス全体としてCO₂が少ない」ことは同じなのか。
最新の研究が示しているのは、必ずしも同じではないということです。
これからの脱炭素モビリティに求められるのは、単にEVであることではありません。
車両をどれだけ長く使い、どのエネルギーで動かし、充電・回収・再配置・保守まで含めて、どれだけ効率的に運営できるか。
ここまで含めて考える必要があります。
01|EV化は、都市モビリティを大きく前進させた
まず明確にしておきたいのは、シェアEVの社会的価値です。
電動キックボードやシェアサイクルは、都市の短距離移動を電動化し、自動車に依存しない新しい移動手段を広げてきました。
つまり、すでに業界は、
「都市に小型・電動・共有型モビリティの需要がある」

ということを社会実装によって証明しています。
これは大きな成果です。
だからこそ、次の競争軸は、
「EVにするかどうか」
ではなく、
「そのEVを、より少ないエネルギーと運営負担で持続的に使えるか」
へ移り始めています。
02|脱炭素は「車両」ではなく「サービス全体」で評価する
EVの利用者から見えるのは、基本的に「乗っている時間」です。
しかし、シェアモビリティのサービスはその前後にも多くの工程を持っています。
製造 → 配置 → 利用 → 充電 → 回収 → 再配置 → 保守 → 再利用・廃棄
こうしたライフサイクル全体を評価する手法が、LCA(Life Cycle Assessment:ライフサイクルアセスメント)です。

2024年に公表されたShared Electric Micromobilityに関する体系的レビューでは、環境負荷を左右する重要要因として、車両製造、寿命、充電電力、車両回収・再配置、メンテナンス、利用率、そしてどの交通手段を代替したかが整理されています。
特にShared E-Scooterでは、材料・製造が主要な温室効果ガス排出要因となり、その次に日常的な車両回収・充電オペレーションが重要になるケースが多いとされています。
つまり、
同じEVでも、「どう作り、どれだけ使い、どう充電し、どう運営するか」によって環境性能は変わる。
ということです。
03|2024~2026年の最新研究から見えてきた3つの共通点
近年の研究を見ると、Shared Micromobilityの脱炭素についてかなり明確な共通認識が形成されつつあります。
車両寿命と利用率が非常に重要
2026年に発表されたHelsinkiのShared E-Scooterに関するLCAでは、製造工程がすべてのシナリオで気候影響の中心となりました。
同研究では、ベースライン条件でおよそ 40~61g-CO₂e/人km の気候影響が推計され、Lifetime Mileageを延ばすことで最大約20%、適切なリサイクルによって35~41%の削減効果が示されています。
つまり、
一台を短期間で使い捨てるより、長期間・高稼働で使う方が圧倒的に重要
ということです。
「走行電力」だけではなく、運営物流も大きく影響する
2026年のドバイを対象としたLCAでは、車両製造だけで1台あたり約144kg-CO₂eの負荷が推計されました。
さらにLifetime Distanceが500kmの場合には単位距離あたり排出量が非常に大きくなり、5,000kmまで使うと約63g-CO₂e/kmまで低下しました。
一方、走行そのものの電力消費量の変化による影響は比較的小さく、高頻度の再配置では約140~145g-CO₂e/kmの追加排出が生じるシナリオも示されています。
これは非常に重要です。
シェアEVの環境性能では、電気を何Wh使うかだけでなく、車両を充電・回収・再配置するために、どれだけ物流を動かすかも重要です。
「EVだから低炭素」ではなく、都市ごとの運営条件で結果が変わる
2025年には、EU100都市のShared E-Scooterを対象としたデータ駆動型LCAも発表されています。
同研究では、ライフサイクル排出量は都市によっておよそ
30~124g-CO₂eq/km
まで大きく変動しました。
主な要因は、利用頻度、走行距離、電力の炭素強度などでした。
つまり、
「EV」という製品カテゴリーだけでは環境性能を判断できない。
ということです。
04|業界自身も「走行時CO₂」から「ライフサイクル」へ進んでいる
これは研究者だけの議論ではありません。
実際、シェアモビリティ事業者自身も同じ方向に進んでいます。
例えばLUUPは現在、公式サイトで、
走行時に直接排出するCO₂だけではなく、車両が作られてから廃棄されるまでのライフサイクル全体の環境負荷を小さくすることが重要
という考え方を示しています。
そのため、
車両を長期間使用するためのメンテナンス、巡回充電からポート充電への移行実証、運営に使用する業務車両の環境負荷低減などを進めています。
これは非常に重要な変化です。
既存のシェアEV事業者も、
「EVを置けば脱炭素」
ではなく、
「サービス全体をどう低炭素にするか」
という次の段階に進み始めています。
05|それでも残る構造的な課題
既存事業者は、車両寿命の延長や効率的な充電、再配置の最適化など、多くの改善を進めています。
しかし、多くのEVモビリティには一つの基本構造が残ります。
外部からエネルギーを車両に届ける必要がある。
例えば、
・バッテリーを交換する。
・充電設備へ接続する。
・充電場所まで車両を移動する。
・充電済みバッテリーを現地まで運ぶ。
こうした作業は、今後ますます効率化されていくでしょう。
しかし、ソーラーモビリティはもう一段違う問いを投げかけます。
「エネルギーを車両まで運ぶ」のではなく、
「車両が停まっている場所でエネルギーをつくれないか」。
ここがソーラーモビリティの出発点です。
06|ソーラーモビリティが変えようとしているのは「電気代」ではない
ソーラーモビリティというと、
「太陽光なら電気代がかからない」
という話に見えがちです。
しかし、小型EVの電気代そのものは決して大きな金額ではありません。
本質はそこではありません。
HelioXが注目しているのは、
エネルギー物流
です。
従来型では、
バッテリー残量低下
→ 充電・交換・回収
→ 再稼働
という流れがあります。
ソーラーモビリティでは、
駐車
→ 車両自身が太陽光発電
→ SOC回復
→ 再稼働
という流れを加えることができます。
さらにSaaSと組み合わせれば、車両ごとのSOCを遠隔監視し、設定値を下回った車両だけ貸出を停止し、電量が回復すれば自動的に再開することも可能です。

つまり、
人がすべての車両を見回るのではなく、必要な車両だけに対応する。
という運営へ近づけることができます。
ソーラーモビリティで本当に検証すべきこと
見るべきKPIは、電気代ではありません。
| 評価項目 | 確認したいこと |
|---|---|
| 外部充電回数 | 外部電源への依存をどこまで減らせるか |
| 充電目的の巡回 | 巡回・回収回数を減らせるか |
| 運営工数 | 1台あたりの人的負担を減らせるか |
| 車両可用率 | 利用可能な時間を維持できるか |
| 1利用あたり運営費 | サービス全体の効率を改善できるか |
| Lifecycle CO₂ | 運用まで含めた環境負荷を減らせるか |
ソーラーモビリティの価値は、
電気代をゼロにすることではなく、エネルギーを届けるために発生する物流と作業を減らせる可能性にあります。
もちろん、梅雨、長雨、冬季、日照条件の悪い場所では外部充電も必要です。
また、需要偏在による車両再配置そのものがソーターによって完全になくなるわけでもありません。
だからこそ、実環境での検証が重要になります。
07|HelioXではすでに「実際に運営できるか」を検証
HelioXでは、富士山・河口湖エリアで特定小型原動機付自転車を約半年間継続運用しています。
当社集計では、これまでに次の実績を確認しています。
| 項目 | 実績 |
|---|---|
| 累計走行距離 | 2,000km超 |
| 累計利用時間 | 453時間 |
| 累計CO₂削減 | 462kg |
| 外部充電 | ほぼなし |
| 事故 | 0件 |
| 現地住民・警察からのクレーム | 0件 |
| 利用者構成 | 外国人:約80% / 日本人:約20% |
※HelioX社内運用データ。第三者認証値ではありません。
この実績で重要なのは、
「太陽光で動いた」ことだけではありません。
実際の観光地で、多様な利用者が利用し、長期間サービスとして運営できたことです。
少なくとも一定の日照条件・利用条件のもとでは、
ソーターによって外部充電への依存を大幅に抑えながら運用できる可能性
が確認できています。
08|エナジーを持つモビリティには「防災」という第二の価値がある
ソーラーモビリティには、脱炭素とは別の社会価値があります。
それが防災です。
平時には、
地域の移動手段
として利用する。そして災害時には、
移動手段+小型電源
として役割を変える。
HelioXの特定小型モビリティはUSB、Solar E-bikeはType-C 60Wによる外部給電に対応する設計です。
これは避難所の大型非常用電源を代替するものではありません。
しかし、スマートフォン、通信端末、小型電子機器など、
災害時の連絡・情報取得に必要な最低限の電力
を地域内に分散して持たせることができます。
さらにSolarによって少量ずつでもエネルギーを回復できるため、
「移動」と「小さなエネルギー」を同じ設備として地域に分散配置する
という新しい防災モデルにつながります。
09|次に必要なのは「都市でスケールできるか」の検証
地方での実証によって、HelioXはまず、
「Solar Mobilityは実際に使えるか」
を確認してきました。
次のテーマは、
「高密度都市で広く展開できるか」
です。
特に検証したいのは、住宅・マンション、不動産施設、ホテル、オフィス、商業施設、業務利用など、日常生活の近くに小規模なMobility Nodeを分散配置する運営モデルです。
その際、評価すべきなのは車両性能だけではありません。
・住民が利用するか。
・不動産事業者に価値があるか。
・Solarによって外部充電や巡回をどこまで減らせるか。
・SaaSによって運営工数をどこまで下げられるか。
・そして災害時に、地域の分散型移動・補助電源として機能できるか。
こうした条件を総合的に検証する必要があります。
10|脱炭素モビリティの次の競争は「運営」にある
EV化は、都市交通の脱炭素における重要な第一歩でした。
そして現在、研究と業界の双方が、
走行時CO₂だけでなく、Lifecycle全体を見る
段階に進んでいます。
そこで重要になるのは、
・車両寿命
・利用率
・電力
・充電
・回収・再配置
・保守
です。
そしてSolar Mobilityは、この中でも特に、
外部からエネルギーを届け続ける構造そのものを、どこまで軽くできるか
という新しい問いに挑戦します。
HelioXが目指しているのは、
「太陽光パネルを搭載した珍しい車両」を作ることではありません。
Solar Energy × Mobility × SaaS
によって、
移動・エネルギー・運営・防災を一つのシステムとして再設計すること。
です。
結論
「EVにする」から、「EVをどう持続可能に運営するか」へ。
これからの脱炭素モビリティを評価する際には、
EVかどうか
だけでは不十分です。
重要なのは、
どれだけ長く使われ、何の交通を代替し、どのエネルギーで動き、充電・回収・再配置まで含めてどれだけ効率よく運営されるか。
です。
Solar Mobilityは、
「エネルギーを届けるMobility」から
「停まっている時間に、自らエネルギーを補充するMobility」へ。
という新しい選択肢を提示します。
そして、その価値を本当に判断するために必要なのは、広告表現ではなく、実際の運用データです。
HelioXはこれからも、走行距離、Solar発電、外部充電、運営工数、Lifecycle CO₂、利用者需要などを実環境で検証しながら、
本当に持続可能なMobility Systemとは何か
を追求していきます。
参考文献・参考资料
Calan, C., Sobrino, N., Vassallo, J.M. (2024)
Understanding Life-Cycle Greenhouse-Gas Emissions of Shared Electric Micro-Mobility: A Systematic Review, Sustainability 16(13), 5277.
Shared Electric MicromobilityのLCA研究を体系的に整理し、製造、寿命、充電、車両回収・再配置、Modal Shift等が環境性能を左右することを示しています。
Life-cycle analysis of shared e-scooter: data-driven approaches in 100 EU cities (2025)
Transportation Research Part D, Volume 148, 105009.
EU100都市の実データを用い、ライフサイクル排出量が30~124g-CO₂eq/kmと都市条件により大きく変動することを示しています。
Judl, J. et al. (2026)
Life cycle and critical raw material analysis of shared e-scooters in Helsinki, Finland, International Journal of Life Cycle Assessment 31, 121.
製造負荷、Lifetime Mileage、Recycling、Modal Shiftの重要性を2024年のHelsinki運用条件に近い形で分析しています。
Climate performance of shared e-scooters in Dubai (2026)
Green Technologies and Sustainability.
車両寿命、再配置率、電力、Modal ShiftをScenario分析し、高頻度Redistributionが主要な運用排出源になり得ることを示しています。
LUUP「持続可能な社会の構築に向けて」
LUUP自身も、走行時CO₂だけでなくLifecycle全体の環境負荷低減を重視し、車両長寿命化、Port充電、運営業務車両の改善等を進めています。